マウスピースを使った矯正とワイヤー矯正の歯の動かし方の違い
歯が動く原理とは?
①持続的に力が加えられると
↓
②押される側の歯槽骨(歯を支える骨)が吸収
↓
③それによりできたスペースに歯が移動
↓
④その逆側(力を加えている側)では、歯の周りに骨がある状態を維持しようと新しく骨が作られます。
矯正治療ではこの原理を利用して歯を動かしていきます。
歯の動かし方① マウスピースを使った矯正
マウスピースを使った矯正では、歯型を元に作成した大きさ、形の違うマウスピースを順番に交換装着し、力をかけ、徐々に歯を動かしていく治療法です。
マウスピースと歯とのわずかなズレを利用して歯に持続的な力を加えることで歯を動かします。
はじめに、コンピューター上で最終的な歯並びの状態と、そこに至るまでの過程をシュミレーションします。シュミレーションをもとにマウスピースを平均20〜40個ほど作成します。治療中は、そのマウスピースを決められた期間に順次装着していくことで、マウスピースの形に合わせて歯が動いていきます。
マウスピースを使った矯正は、マウスピースを外している時は矯正力がかからないので、食事と歯磨きのとき以外は基本的には装着し続けることになります。1日の中で外している時間が長くなってしまうと計画的に歯が動かなくなるので、再び歯型取りをし、マウスピースを新しく作り直さなければならない場合があります。
歯の動かし方② ワイヤー矯正
矯正は、歯にブラケットと呼ばれる四角い小さな装置を接着剤で貼り付け、そこにワイヤーを通して歯を移動させていく治療法です。
ワイヤーの元に戻ろうとする性質やワイヤーのしなりなどを利用し、歯に適切な力をかけることで歯が動いていきます。歯が動く原理はマウスピースと一緒で、ワイヤー矯正はワイヤーによって常に持続的な力をかけることができるのが特徴です。
マウスピース矯正とワイヤー矯正の違い
マウスピース矯正の歯の動きは4つに分かれます。
- 前後的な移動、横方向の移動
- 回転移動
- 上下的な移動
- 傾斜移動
マウスピースを使った矯正での歯の移動様式は傾斜移動が主です。歯の傾きを変えて行う移動です。
1クール(6~8週)で最大1mmほど歯が動きます。使用時間が少ない方は0.5mmほどの移動となります。
マウスピースを使った矯正は上方向に歯を移動させることが苦手で、下方向には1クールで0.5mmほど動かすことが可能です。もしも歯を上に動かしたい場合は顎間ゴムを使用し、引っ張る過程が必要になります。ワイヤー矯正よりも1クールで動く量が少なく、目に見えて動いていくほどの変化は感じにくいかもしれません。
ワイヤー矯正の歯の動きも大きく分けると4つがあります。
- 水平移動
- 傾斜移動
- 回転移動
- 上下的な移動
ワイヤー矯正で歯や歯の周囲の骨に負担をかけずにスムーズに歯を動かすためには、3〜5週間に1度のペースで来院していただくのが理想とされています。また、1ヵ月に歯を動かせる限界は0.5mm〜1mm程度と言われています。
マウスピースを使った矯正とワイヤー矯正について、歯の動かし方を比べると大きな歯の移動ができるかどうかがポイントです。
成人の場合、そのままでは歯を並べられるスペースが不足しているため、抜歯をしてスペースを作って歯を並べる場合が多々あります。また、全体的にすきっ歯で歯のスペースが大きく開いている場合もあります。そのような場合では、マウスピースを使った矯正の傾斜移動では目的を達成できなかったり、かえって咬み合わせがおかしくなってしまうことがあります。そのため、抜歯を伴うような矯正やすき間が広く、大きい移動量が必要になる場合において、マウスピースを使った矯正では良い治療結果を得られないことがあります。
歯全体の大きな水平移動が必要な治療にはワイヤー矯正の方が適していることがあります。